日常ステッキ(転んだ先の知恵)

限りなく偏愛に満ちた音楽、映画、文学、アート、その他日常に感じる素敵な事柄、あるいは事象に関する覚え書

イマジネーションの洪水に浮かぶ茅野の泥舟を観に出かけよう

f:id:sahizuka66:20190321234307j:plain

空飛ぶ泥舟

長野県茅野市出身の藤森照信氏による建築物、
空飛ぶ泥舟見たさに、東京から茅野へ、
電車を乗り継いでいざ現地を訪ねてみた。

日本最古の神社のひとつに数えられる
諏訪大社の上社を始め、
蓼科高原八ヶ岳といった恵まれた自然環境を
四方に眺め入ることのできる土地柄だけあって、
澄んだ空気の中に
何やら遠いDNAレベルでの懐かしさを宿すトポスとして
茅野という土地のもつ喚起力に磁石のように惹きつけられる。

その八ヶ岳を背景に臨めるこの「空飛ぶ泥舟」こと
藤森氏の茶室は、まさに空中に浮かんでおり
まるで、ジブリの建築物であるかのように、
どこか非現実的ではありながらも
それこそ、妖精や精霊たちが集まってきそうな
そんなユニークな建築物として目に飛び込んでくる。

この泥舟のなかに、茶室があるらしいのだが、
残念ながら、なかには入れなかった。
入れるとしても、はて、物理的にどこからどう入るのか、
たくましい想像力を掻き立てられる。
が、下から眺め入って中を想像するだけでも
十分に微笑ましい気分にはなれる。
子供なら誰もがそう思うはずだ。
いや、子供心を持ってさえすれば、とでも言い換えておこう。

このほか、この場所には高過庵・低過庵なる
遊び心満載の建築物を眺めることができる。
まず2004年に完成した「高過庵」なるツリーハウスは、
アメリカの雑誌"Time"で
「世界でもっとも危険な建物トップ10」の一つとして
選出されたぐらいだから、
地震が来たら一溜まりもないのだろうけれど
そんな現実を忘れさせてくれるほど、
個性的な夢の建築物である。

「 低過庵」はさすがに茅野自体が
5000年前の縄文文化繁栄の地ということもあって
「縄文アートプロジェクト2017」の一貫で制作された
2017年に完成した新しい竪穴式茶室で、
銅板ぶきの三角形の屋根は、横にスライドして開示され、
室内の内装は漆喰仕上げという凝りようで
ちゃんと湯沸かし用暖炉があるんだとか。
仮に、自分が旅人なら、旅の途中にこんな小屋に出会い
偶然にでももてなされてみたい、
そんな素朴なファンタジーが同居しているのが
藤森建築の親しみやすさに現れているような気がした。

自然素材と植物を使って建築と自然の関係を根本から考え直し、
かつ人類がはじめて建築という人工物を作った時点に迫りたい
という氏のコンセプトは、
目に映るものはすべて自然の素材というこだわりによって
近代の機能的な建築とは真逆のベクトルを持つ
ユニークな造形美を具現化している。

藤森照信という建築家は、
もともとは日本近現代建築史、自然建築デザインといった
建築関係の研究者からスタートし、
44歳で郷里茅野に『神長官守矢史料館』を建てデビューした変わり種だ。

その他にも、赤瀬川原平南伸坊らと路上観察学会を結成したり、
同じく赤瀬川原平命名による「縄文建築団」という
素人建築趣味集団を立ち上げるといったユニークな活動をも続けている。

サステナビリティ(持続可能性)
あるいはヴァナキュラー(その土地固有の)といったキーワードで
社会と地球環境との良好なる関係性そのものを
保持し続ける建築家として
今後もそのインターナショナルな活動が期待される
未来的な建築家である。